『 最後から、始まる。 』~卒業~ きみと過ごす残り1ヶ月
杉山と私が歪な関係になったのは
3年生の2学期だった
杉山も私も
とっくに部活を引退して
進路も決まった
あとは
無事に卒業できればいい
私は相変わらず
杉山を見てた
杉山が好きだった
杉山は
まだ
先生のことが好きなのかな?
杉山の視線の先には
もぉ先生はいないけど
きっと心の中には
先生がいるんだろうな
昼休みの音楽室を通ったら
杉山の姿が見えた
「杉山…」
私に気付いて
杉山が顔をあげた
何してるの?
杉山
「先生のこと、思い出してるの?」
それしかない
「いや…
浅倉、来ないかな…って…
…
いつも待ってた、ここで…」
「え…私?」
杉山の口から私の名前が出て
動揺した
「だって教室だと
オレのこと見てるくせに
オレが見ると目そらすし…」
「え!見てないよ!そらしてもないし!」
嘘
見てる
自分でも自覚ある
「ほら…今もそらした」
「それは杉山が見るから…」
「見たらダメなの?」
「ダ、ダメ…!
杉山は、見たらダメなの!」
杉山は先生を見てればいいの!
そう言おうとしたけど
先生は
もぉいないんだった
「浅倉…」
杉山が私に近付いた
ドキドキするけど
引き寄せられるみたいに
私たちは
また
抱き合った
杉山の心臓の音も聞こえる
ドキドキするけど
こーしてると
安心する
「見ていい?
浅倉の顔」
「ん…ダメ…」
そう答えたのに
杉山が屈んで
私の視界に入ってきた
一気に顔が熱を持った
「嫌だったら、逃げてもいいよ」
そらしたいのに
視界いっぱいに杉山がいる
かわしたいのに
杉山に抱きしめられてて動けない
叫んで逃げることもできるのに…
きっと私は
「嫌じゃない…
…
杉山…離れないで…」
もっと杉山を強く抱きしめた
杉山も私をもっと強く抱きしめてくれた
「杉山…
ドキドキするけど…
離れないでほしい…
離さないでほしい…」
「浅倉が求めてくれるなら…
オレは逃げないよ」
私は杉山が好きなのに
逃げてたのは
私だった
こんな求め方が
正しいのかはわからないけど
先生以上に
深く
杉山と繋がりたいと思った