『 最後から、始まる。 』~卒業~ きみと過ごす残り1ヶ月
カラオケは
杉山が言うとおり
盛り上がって
私が考えてるようなことは
しなかった
「楽しかった」
「オレも楽しかった」
「杉山、騒ぎすぎ
店員さんに怒られたし」
見たことない杉山
制服じゃない杉山
走り終わった時とは
また違う笑顔
最後に見れた
クールで少し大人びて見えてたけど
やっぱりただの男子高校生じゃん
「浅倉って、やっぱ歌うまいね」
「うまくはないけど、歌は好きだよ」
「オレなんか毎日走ってるけど
走るのあんまり好きじゃないかも…」
「今更?
毎日、頑張ってたじゃん」
「走るの止めないでね…って
誰かに言われたから…」
あ、私だ
「見てくれてる人がいるから
応援してくれる人がいるから
オレ、頑張ってたんだと思う
…
先生が背中押してくれて
そんな先生を好きになって
オレ頑張ってた
…
でもその先生が結婚するとか…
あの時はショックだった
…
オレ、地元の大学生になって
先生と付き合うって本気で考えてたんだよね
バカだよな
進路相談なのに告白した
そしたら、振られた
…
ごめん
あの時、廊下出たらすぐ浅倉に会って
浅倉には関係ないとか…
酷いこと言ったな…って…
…
でもあの時
浅倉に会ってなかったら
オレ走るの止めてたわ
…
浅倉が言ってくれたから
また頑張ろうかな…って…
清水より凄い大学行ってやる!って
大学の推薦受けたけど
清水の出身校だった
ま、もぉいんだけどね…
適当に走って卒業して来るわ」
走ってる杉山
好きだった
教室で
先生を見てる杉山も
好きだった
先生の伴奏聴いてる杉山も
先生を抱きしめた杉山も
杉山が先生を好きなの知ってて
私は杉山を好きになった
「ちゃんと頑張ってね!
これからも、応援してるよ」
これからも
私は杉山を
好きだよ
「んー…頑張れるかな…
だって浅倉、近くにいないじゃん」
「杉山が遠くに行っちゃうんでしょ」
「そーだった」
「そーだよ」
私が近くにいなくても
大丈夫なクセに
私は
杉山がいなかったら
ダメだった
「私も杉山がいたから
ピアノ頑張れたよ
…
先生みたいに弾けるかな…
みんなの前で弾けるかな…
不安とプレッシャー凄かったけど
引き受けてよかったな…って…」
引き受けてなかったら
私と杉山は
今こうして一緒にいることもない気がした
あの時
杉山が
抱きしめてくれたから
私は頑張れた
杉山を
どんどん好きになってた
歪な関係になってしまったけど
好きな人と
どんな形でも繋がってたかった
先生よりも
深く
繋がってたかった
でも
今日は
もぉ
抱いてくれないんだね
「杉山、ありがとね
離れても
それぞれ頑張ろうね」
「なんか、別れ話みたいだね」
杉山が笑ったから
私も笑ったけど
ホントは寂しかった
もし付き合ってたら
きっと
もっと辛かったんだろうな…
そっか…
これで
よかったんだ