『 最後から、始まる。 』~卒業~ きみと過ごす残り1ヶ月
「雨降らなくて、よかった」
「うん」
杉山と駅で待ち合わせて
路上ライブを見に行く
「浅倉、路上ライブとか行ったことあるの?」
「ないよ
いつもSNSで見てるだけ…
なんか、ひとりで行くの勇気いる」
「好きな人に会いに行くみたいな?」
好きな人
「そーなのかな…」
その気持ちは
よくわからない
今
杉山が隣にいることの方が
ドキドキする
電車が揺れるたび
杉山に触れるカラダが
思い出す
杉山の温もり
私を抱いてくれた腕
「ごめんね、杉山
付き合ってもらっちゃって…」
「いいよ、別にヒマだし…」
「杉山、そんなヒマなの?
最近、走ってないの?」
「毎日、走ってるよ
今日も浅倉に会う前、走ってきた
浅倉がオススメしてくれた曲聴きながら…」
「そーなんだ…」
「いい曲だね
楽しみすぎて、昨日寝れなかった」
杉山の方を見ようとしたら
私の肩に杉山の重さがのった
ほのかに杉山のシャンプーの匂いがした
ん…?
杉山
寝たのかな?
そっと見たら
目は合わなくて
長いまつ毛が見えた
杉山
そんなに楽しみだった?
ドキドキして
私も目を閉じた