追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
「あ……それならわかります。ディオがぼやかして言うから混乱したんですよ!」

「え、俺のせい?」

 ディオは大袈裟に笑って見せた。
 何気ない掛け合いが、なんだか心を軽くする。ディオと一緒だと、素の自分でいられてとても楽なのだ。
ただし、整った顔面で迫って来られたら……ドキドキするけど。
 意味のないことを言い合いながら、私とディオはソラスを目指して前進する。
 ソラスの首都に着くと、活気あふれる音と熱気が私たちを包んだ。
 両脇に並ぶ露店は奥まで続き、先が見えないくらいの人の波がうねっている。露店の後ろには、食堂や宿屋の看板も見え、大勢の人が出入りしていた。
 グリーランドの自然豊かな景色とは真逆の賑やかな彩色に目がチカチカする。
 眩しくて目を細めていると、ゼクスが声をかけて来た。

「人が多いでしょう? はぐれないように付いて来て下さい。こちらですよ」

 激しい人の流れをゼクスはスイスイと抜けてゆく。そのあとを慌てて付いて行こうとするけれど、慣れない私ではうまく歩けない。どうしよう、と思っていると、前を行くディオが振り向いた。

「手を貸して」

「あ、はい。ごめんなさい、ディオ」
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