追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 ゼクスは豆の皿をこちらに寄越しながら説明した。
 なるほどね。グリーランドが鎖国状態なのに、比較的物資があったのは、ゼクスがソラスから援助していたからだ。
 しかし、ひとつの疑問が解ければ更なる疑問も生まれる。
 酒場なら情報収集には持ってこいだけど、山賊が何の情報を欲しているのか、それがわからない。グリーランドでふたりが話していた物騒な話に関係するのなら、下手に質問はしない方がいいか。
 私は無難に「そうですか」と返すと、豆を一粒、口に放り込んだ。ほんのり塩気があり、香ばしく、歯ごたえがある。
 なにこれ、すごく美味しい! 豆はいろんな種類を食べたことがあったけど、これは今までにない食感だ。

「お気に召されたかな」

「はい、めちゃくちゃ……あー、とても美味しいです」

「ははは。いいですよ、畏まらないで下さい。これはね、ソラスで栽培されている豆でピヨルと言います。味付けは簡単なもので、カラカラに炒って塩を振る、それだけです」

「えっ、それだけでこの味を?」

 素材だけでこの美味しさだなんて……神か! 私の独断と偏見で、豆を買い付け、栽培して堪能したい。
< 125 / 275 >

この作品をシェア

pagetop