追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 そのレベルの旨さである。目の色を変えて豆を凝視していると、ディオが楽しそうに言った。

「気に入ったならピヨルも買っていこう。ちなみに豆は水耕栽培出来るのか?」

「正直、やってみないとわかりませんが、可能性は高いかと」

「なら、買いだな! ゼクス、扱っている商人を教えてくれ。今からララと行ってくるよ」

「はい、ただちに」

 ゼクスがパンパンと手を打つと、さっと女性がやって来る。女性は、ゼクスから指示を受けると即座に外に出て行き、数分後、紙切れを手にやって来た。

「こちらが、商人の名前です。場所もこの酒場からそう遠くはないようですよ。どうぞ」

「ああ、すまない」

 ゼクスから紙切れを受け取り、ディオは勢いよくジョッキをあおる。
 そして立ち上がると、私に手を差し出した。

「行こうか!」

「は、はい」

 差し出された手を取り立ち上がる。
 あれほどグリーランドの改革や、目立つことを嫌っていたディオが、とても生き生きとしている。その解放されたような姿を見て、私も嬉しくなり自然と笑みがこぼれた。
 
 酒場を出て、また私たちは人の波の中に身を投じた。
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