追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 夕暮れ近い大通りは、夕飯の買い出しをする女性たちが多くなり、ガラッと客層が変わっている。露店もそれに合わせて若干商品を変えているようだ。
 そういえば、ファルナシオンの町はどんな感じなのだろう。
 私は、ファルナシオンに住んでいたのに、町の中を知らない。世界は狭い自室だけで、窓からは森しか見えず、民の生活など知る由もなかった。カレリアス邸から逃げた時も、すぐに森に隠れたので町の様子はわからないまま。ソラスと同じくらい活気に溢れているのか、どんな商品が並んでいるのか、少しくらい覗いてから離れればよかったと少し後悔していた。

「よっ! 男前の兄ちゃん! ちょっと覗いて行かないか?」

 突然の大声に、現実に引き戻された。
 反物を出していた商人がディオに声をかけたのだ。ディオはそれを軽くいなし、笑って通り過ぎる。
 すると、周りの女性たちが一斉に黄色い声を上げたのだ。

「きゃあ、本当に男前だわ!」

「どこの人かしら。誰か声をかけなさいよ」

「ちょっと、どいてよ、よく見えないわ!」
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