追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
「ふーむ、葉物野菜ね……」

店主は、一旦露店の裏側に行くと、小さな芽が出た土の塊を持って来た。

「こいつだったら、まだ裏にたくさんあるし、タネもある。ただね、少し苦くて人気がない。好きな人は好きなんだけどねえ」

「苦い? 不味いのではなくて?」

「不味くはない、苦いんだ。で、とても栄養がある! 良薬は口に苦しっていうだろ? ケールっていうんだが」

「ケール?」

 栄養満点のスーパー食材ケール? 前世で毎日スムージーにして飲んでいた、あのケール? 
 なんてこと! この世界でケールに出会えるなんて、もう最高だわ。

「全部下さい」

「いや、まず、少しから始めてみた方がいいよ? 思っていた味と違ったらいけないし」

 店主は窘めるように言った。
 しかし、味も栄養価も知っている私にとって、その忠告は無意味である。確固たる決意を顔で表した私を見て、店主はひとつ頷いた。

「わかった。全部持っていきな」

「あ、ピヨルも下さい」

「ほう。あんた、かなり通だね。気に入った! 全部合わせて三十ルピでいいよ」

 三十ルピとは一体? 貨幣価値と相場を知らない私は狼狽え、そして、ディオを見た。
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