追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
「店主さん、実は私、旅商人でして、世界の便利なもの珍しいものを扱っているんです」

「ほう! そうなのかい」

「はい、それでですね、今偶然見つけてしまったのですが、荷車を新調したいとお考えでは?」

「ああ、もう限界でね……でも、どれも高くて手が出ないんだ。どうしたもんかと思っていたところだよ」

 店主は疲れたように笑った。

「では、私が最新の荷車を創……いや、お渡しします。それと、商品と交換ではどうでしょう」

「ええっ! うーん、そうだなあ、物を見てからだね」

「もちろんです! 見てもらって気に入ったらで結構ですよ」

 私はディオに目配せをし、創造魔法を使う時間を稼いでもらうことにした。敏いディオはすぐに気付いて、店主の気を逸らす。ふたりが後ろの商品に目を向けているほんの一瞬で、私は荷車「キャリーワゴン」を創り出した。

「お待たせしました! これなのですが」

声をかけると、振り向いた店主は目を丸くした。

「……なんだい、この黒い塊は。荷車にはとても見えないけど」

「確かに、この状態なら荷車には見えません。でもこうすると……」
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