追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
「え? あーうん! いーよ! 勝手に持って行って! まいどありー」

「いえ、こちらこそ! じゃあ、さよならー」

 大声で会話を繰り返したのち、私たちはめでたく目的の物を手に入れ、帰路に着いた。
 辺りはもうすっかり暗くなり、賑やかだった往来からは極端に人が減った。前より歩きやすくなった大通りを、苗を抱えたディオと並んで歩いていると、ふと彼が言った。

「ゼクスにお金を借りるという選択肢もあったのに、どうして魔法を使ったの?」

「ああ、それはですね、ボロボロの荷車を見て、相当困っているのかなと思ったんです。でも、荷車は高い。私たちの払う三十ルピでは、たぶん全然足りません。だったら、創って交渉したらいいかなって……いけませんでした?」

 ディオに相談せずに勝手に決めてしまった、と今更ながらに気付き、少し遠慮がちに尋ねてみた。
 そういえば、ソラスに来る道中で「洗濯機を創ると戦争が起きる」などと、言っていたよね。余計なことをしたと、ディオは内心怒っているのかも。と考えて、調子に乗って創造魔法を使ってしまったことを後悔した。

「いや……よく見ているなって、感心した」
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