追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 ディオは夜空を見上げながら言った。
 怒っているようには見えない。それどころか、口角を上げ、目じりを下げ、優しく微笑んでいるように見える。

「感心……ですか? じゃあ、怒ってはいない?」

「怒る? どうして?」

「だって、洗濯機を創ると戦争が起こるって。創造魔法をソラスで使うの、あまりよくないんじゃ……」

「確かにね。君の安全を考えると、この辺りで創造魔法をむやみに使わない方がいい。だけど、どうやら君は、困っている人を放っておけない性質で、不思議なことにそれが吉兆を呼ぶらしい。だから思う存分、好きなようにやるといいよ」

 肩を竦めながらも、朗らかに笑うディオ。
 閑散とした大通りを悠然と歩くディオの隣で、私は照れ臭くなり俯いた。
 困った人を放っておけない、という性質ではないと思う。ただ、私の魔法で誰かが助かり、笑顔になってくれるなら、こちらも嬉しくなる。そう、これはやっぱり自己満足だ。
 それを、ディオはいいように捉えているだけ。でも、彼に褒められるのは存外いい気分だった。
 夜風の中を、ふわふわした気持ちのまま歩く。
 そうするうちに、ゼクスの酒場はもう目の前だった。

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