追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 黒い体に黒い角。黒い翼に黒い尻尾。大きく裂けた口には鋸のような歯が沢山あり、爪も鋭い。まるで、物語に出てくる魔物。その魔物が、泣き叫ぶサーシャを鷲掴みにして飛んでいた。

「サーシャ! サーシャを離してぇー」

「グギギ、ギギギ」

 マイアの懇願を、嘲笑うような魔物の声。無機質なその声は、少しの感情もないように思えた。

「ディオ! サーシャが捕まってる! 早く助けないと!」

 私の叫びに呼応して、守護獣たちも出て来た。彼らにとってサーシャは大事な友達だ。その友達の危機に、怒り心頭のようだ。

「来たか……」

「え?」

 ディオは空の魔物を見ながら、低く呟いた。
 来たか、と言った? ひょっとして、この魔物のようなものがディオたちの追手? 
 いや、今はそんなこと後回しだ。サーシャを助けなければ!

「ディオ! 私と守護獣でサーシャを助けます!」

「駄目だ。君は隠れていろ。俺と守護獣でサーシャを助ける。いいと言うまで絶対にここを動くなよ」

「そんなこと出来ません! 隠れているなんて……そんな……」

「大丈夫。サーシャは助かる。誰ひとり傷つかない」
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