追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです

「無礼者。そなた、誰に刃を向けようとしているのか、わからぬのか」

「はっ、なにを……」

　声の主、ヘンルーダを見て、ガノンは目を剥いた。

「そんなばかな……あなた様は、火事で死んだはずでは……」

「ファルナシオンではそうなっているのでしょう。誰も真実を知らぬ。王妃と王太子が暗殺から逃れ側近と共に、辺境に逃れたことなど」

　剣に手をかけたままのガノンは、驚愕の表情から困惑の表情に変わった。たぶん、私も同じ顔をしている。
　それほどヘンルーダの話は驚くべきものだったのだ。
　整理すると、ヘンルーダはファルナシオンの王妃様で、ディオは王太子。暗殺から逃れて、側近たちとグリーランドに落ち延び隠れ住んでいた。ということは、ウーノやオットは護衛騎士か側近。マイアとグレイスはメイド。この状況で、ヘンルーダが冗談を言うとは思えないから、真実なのだろう。