追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 でもそうなったら、アメちゃんに火炎砲をぶちかましてもらえばいいか。

「どうもー。こんばんはー……」

 腰が引けた状態で登場した、人呼んで希望の星。そんな情けない私に、鋭い視線がいくつも突き刺さった。
 それは概ね騎士たちのものだ。

「聖女か?」

 ガノンが問う。

「違います! 王都を離れる時、聖女の称号は無くしましたので。どうぞ他を当たって下さい」

 王都へ帰ると、もれなく死ぬ。そんなのはごめんである。せっかく自由に生きられる場所を見つけたのに、死んじゃうなんて、可哀想すぎない? と、自分で自分を憐れんでみた。

「だが、宰相様はそうは言ってなかったぞ? アンセル王子が勝手にしたことだと悔いていた。なんとか、あなたを王都に戻し、何不自由ない生活が送れるようにすると言っていたが」

「だろうな。彼女こそが、この世で一番魔力が強い人間なのだから」

 ディオは真っ直ぐに私を見た。
 山賊のお頭にして、ファルナシオン王太子であるディオ。
 彼は、この国のなにを知っているのか。
 ファルナシオンに巣くう悪とはなにか。
 それは、聖女を生贄にする儀式と関りがあるのか……。
 真実を知るのは怖い。でも、私はそれを知らなければならない気がしていた。
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