追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 ガノンは頷き、後方の騎士を呼び寄せると全力疾走させた。
 騎士の背中はすぐに小さくなり、城郭門へと消える。それからわずか一分後、城郭門が仰々しく全開した。
 私たちは吸い込まれるように門に入る。速度を落とし町中を走ると、王都の民が行き交う姿が見えた。
 人数が少ない、と感じたのは、フェイロンによる住民の移動が順調に進んでいるからだろう。さすが、各国に影響力のある星見の宮様、彼の言うことならと住民も素直に従っているらしい。普段は我儘系厄介男子だけど、やる時はやるのだなと感心した。
 奥へ奥へと駆けると、また門が見えた。今度の門は、城郭門より装飾も美しく立派で、一目で王宮に至る門だとわかった。

「王都の中って、こんな風になっていたんですね」

「ララは見たことがなかったか。そういう俺も、十数年ぶりだけどね」

「王都よりもグリーランドの方が故郷のような気がします」

「同感だな」

 馬上でとりとめのない会話をしながら、這い上がってくる緊張を押しとどめる。
 後ろから聞こえるディオの声にも緊張が混じっている気がした。
 でもそれは、恐怖ではない。武者ぶるいのようなものだ。
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