追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
「ええ、許しますとも。間違いは誰にだってあります」

「おお! ありがたい! では、早速こちらへどうぞ」

「あ、その前に、私の護衛としてこの者を付けたいのです。騎士団の一員の方で、名前はデ、デ……えっと……」

 しまった。名前を考えていなかった。あたふたしていると、淡々とディオが言った。

「聖女様、お忘れですか? デルファスです。宰相様。よろしくお願いいたします」

「ふむ。そうですか、まあいいでしょう。祝祭まで心してララ様をお守りするように」

「はっ!」

 野太く答えたディオは、馬を降り、私の背後に立った。
 ガノンたちに目配せをして、私とディオは宰相のあとを付いて歩く。
 見慣れぬ王宮に目を奪われていると、不意に宰相が振り返った。

「ララ様、失礼ですが、今までどちらに?」

「ファルナシオンとソラスの国境付近です」

 きっとこの質問はされるだろうと思っていたので、シミュレート済みである。ディオの名前の二の舞は演じないわよ。

「ほう、随分遠くまで行きましたね。あ、勘繰っているわけではないのですよ? ただ……」

 宰相は、立ち止まり私の全身を上から下までじっくり眺めた。
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