追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 相変わらず、思ったことしか口にしないな……と、心の中でため息を吐いた。
 普通の人なら、まず挨拶をして、追放したことを謝ってから本題に入るのに、アンセルはなんでもすぐに口に出す。一旦頭の中で考えることをしないのだ。
 隣を見ると、宰相も呆れているようだった。本当にこれがディオの弟なのだろうか。母親は違うと聞いたけど、半分同じ血が流れているとは全く思えない。ヘンルーダに聞いた話によると、アンセルの母親は子爵令嬢で彼を産んですぐ亡くなったらしい。それから、王宮でひとりになったアンセルをヘンルーダは気にかけていたようだけど、当のアンセルは聡明な兄ディオを羨み、敵意剥き出しで接していたとか。

「殿下。なぜこちらに? ご興味ないかと思っておりましたが?」

「なにを言う。ファルナシオンの聖女を次期国王たる私が迎えに来るのは、当然ではないか?」

 その言葉に一同が驚愕した。
 恐ろしい……この状況を作り出したのが誰なのか、まるっきり忘れてしまっている。
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