追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 ログハウスを見て、井戸の洗濯場を探し、裏の小川も探した。水耕栽培の様子を見に行ったのかなと思ったけど、そこにもいない。自転車に乗っているのかもしれない、とサイクリングロードの方も見たけど、ディオはいなかった。
 あと、居住区で探していないのは崖の上だけ。
 月の出ている夜以外にディオがいるとは考えにくかったけど、一応行ってみることにした。

「あっ、いた! ディオ!」

 いつもの大きな岩に、ディオは腰掛けていた。月ではなく、太陽を見つめる姿はとても新鮮である。
 月明かりもいいけど、陽光も似合うなと思いながら私は彼に近付いた。

「もう! 探しましたよ? 宮様とアルメイダさんも到着して、今温泉に入っています」

「そう。また騒がしかっただろうね」

「はい、相変わらず」

 そう答えると、ディオの隣に座った。
 最近ディオは、なにかを考え込んでいる時間が増えた。気になる予見でも見たのだろうか。
 でも、それなら絶対、私やみんなに相談するはずだ。だって、あの月蝕の夜、そう約束したのだから。
 それに、考え込むディオは難しい顔をしていない。どこかわくわくするような、輝く瞳をしているのだ。
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