追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 一緒に……ディオと一緒に……私が?
 何度も何度も反芻して、心の中で繰り返す。旅にはとても興味がある。でも、私が付いて行っていいものだろうか。

「世界にはもっと珍しい鉱石や宝石があるはずだ。それを使って創造してみたいと思わないか? 君にとっても俺にとっても、いい経験になると思うんだ」

「興味は、あります。でも、私がいない方が自由に動けるんじゃないですか?」

 足手まといになるのは嫌だ。男ひとりの方がなにかと動きやすいだろうし、気を遣わせてしまうかもしれない。

「俺はね、君と旅に出たいんだ。君と世界を見て、共に感動し、共に笑い、時に泣いて、いろんなものを共有したい」

 ディオはとても真剣に言った。
 そのセリフがまるで愛の囁きのように感じて、私は気恥ずかしくなった。

「そ、そうですか。ディオがそう言ってくれるなら、私も同行したいです。広い世界を見て、いろんな人に出会いたい」

「よし! じゃあ、行こう」

 立ち上がったディオは、颯爽と私に手を差し伸べた。
 その手を取って立ち上がると、気持ちのいい風が頬をすり抜けてゆく。
< 274 / 275 >

この作品をシェア

pagetop