追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 日が差さぬ森の中を進み、暫くすると、岩壁に辿り着いた。どうみてもそこは行き止まり。
 しかしディオは、岩壁に向かって大声を出したのだ。

「ディオだ! 開けてくれ」
 
 その瞬間、轟音とともに岩壁が真っ二つに割れ、中から道が現れた。

「驚いたかい? ここは、隠し扉になっているんだ」

「隠し扉? 警戒が厳重ですね」

 山賊って、そんなに狙われるものなの? どちらかというと、攻め入って強奪するイメージなんだけど。
訝しむ私をよそに、説明をしながら、ディオは先導する。慣れない私の手を引きながら、慣れたように薄暗い道を進むと、やがて、出口に着いた。着いた先は大きく開けた場所で、複数の小さな民家がある。ちょうど、山脈の窪地になっていたようで、空からでは確認できない場所のようだ。

「こっちだよ」

 ディオは民家を通り過ぎ、どんどん奥へと進む。すれ違う住民がディオに恭しく頭を下げ、後ろの私を不思議そうに見る。そんななんとも落ち着かない中、辿り着いたのは一件の民家。他の民家よりも少しだけ大きく、若干しっかりした造りになっていた。

「着いた、ここが俺の家。入って」

「あ、はい。お邪魔します」
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