追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 恐縮しながら入ると、中にはひとりの女性がいた。上品な雰囲気がディオによく似ていて、艶やかな黒髪とエメラルドのような瞳もディオと同じ。オッドアイではなかったけれど、一目で血縁だとわかるほど似ていた。

「ディオ? 誰か来たの?」

 女性はこちらを見ている。でも、焦点が合っていない。人が来たということを判別出来ているから、全盲ではなく、視力が弱っているのだと思った。

「そうです、母う……母さん」

「あら。その様子は、もしかして?」

「はい」

 ふたりの短い会話の中で、ディオと女性が親子であることを知った。が、会話の内容はよくわからなかった。「その様子は、もしかして?」「はい」これで会話が成立するなんてあり得ない。親子の阿吽の呼吸に感動していると、ディオが言った。

「ララ、母は見ての通り物が見えにくい。昔火事に巻き込まれてね、それからずっと……だが、この居住区のことは目が見えなくても知っている。暫くはこの家に住むことになるだろうから、わからないことは聞くといい」

「え、と……私、お心遣いは大変嬉しいのですが、ここに移住しに来たのではなく……」
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