追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 山のような宝石に目がくらみ、頂きに来ただけの者なのです! たんまり宝石を手に入れたら、旅商人をしながら、各地を転々とするつもりでいる。

「ララさん、と言うのね。私はヘンルーダ。ここにあなたが来てくれてとっても嬉しいわ。ぜひ、ゆっくりしていってちょうだい」

 ヘンルーダは私の前にやって来て、優しく手を握る。その暖かさに、決意が揺らいだ。彼女の手は、どんなに望んでも、会うことの出来ない「母」を連想させたからだ。

「……はい、ではお言葉に甘えて。暫く御厄介になります」

 思わずそう言ってしまったけれど、後悔はなかった。ヘンルーダがとても嬉しそうに笑ったからだ。

「それで、ララは何かを求めてここにやって来たのだろう?」

 突然ディオが言った。
 ついさっきまで、考えていた邪念を見透かされたようで、一瞬息が止まる。どうしてディオは、なんでもお見通しのように言うのだろう。もしかして、心が読めたりするのかな? でも、宝石を取りに来たなんて言って態度を豹変させられても怖い。

「ええ、まあ、そうなんですけど、別に大事な用事じゃないので」

「こんな辺境に軽い用事では来ないだろう?」
< 40 / 275 >

この作品をシェア

pagetop