追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 ナタリアはこちらを振り返り愉しそうに笑う。

「ほう。それは良い。おい、お前。二度とファルナシオンの地を踏むことは許さんぞ。わかったか!」

「ふふっ、ララ? すぐにでもこの王都から去りなさい。でないともっと重い罰が下るかもしれなくてよ」

「そんな私、行く場所なんてない……殿下、お姉さまっ? ま、待って!」

 連れだって去ってゆくふたりに、声を枯らして叫んでみても無駄だった。彼らは、私など眼中にないかのように、言葉を交わしながら歩いて行った。なんとか落ち着こうと深呼吸をし、ふと手元の宝石箱に目を落とす。そういえば、なんでさっきは創造魔法が使えなかったのだろう。こんなことは、今までなかった。
 再度宝石箱を開け、中身を確認してみる。
 すると、とんでもないことに気が付いた。
 注意深く見てみると、中の宝石の全てが綺麗に着色されたガラス玉。一目では判別が出来ないほどの精巧な偽物であった。大地の恵みを受けた鉱石でないと創造魔法は使えない。
 昨日までは確かに宝石だったのを確認している。私はずっと部屋にいたし、誰も入ってないはず……。
 ううん、ちがう。
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