追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 昨日、一度だけ「掃除をしますから」と侍女に言われ、部屋を出た。ほんの短時間だったけど、挙動不審な侍女の様子をおかしいと思ったのだ。まさか、その時にすり替えを?
 そこまで考えると、先程までのナタリアの行動が腑に落ちた。姉は、私を聖女の座から引きずり降ろすために、嘘を吐いたのだ。すぐにばれるだろう嘘だけれど、問題はそんなことじゃない。
 馬鹿げた嘘を吐いてまで、私を聖女に、そして、王子の婚約者にしたくなかったという憎悪の深さ。

「ああ……ここまで恨まれていたなんて。私は生きていてはダメなの? もう……消えてなくなりたい……」

 言葉に出してしまうと、悲しみがより募る。
 衝撃的な事実は、私の心に大きな損傷を与え、その瞬間、意識は闇に沈んだ。
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