追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 物語の冒頭の言葉を、どうしてディオが知っているのか、とびっくりしたけど、伝承なら納得である。今世の私は聞いたことがなかったけど、民の間ではみんなが知っていることなのだろう。でも、突然この伝承を口に出したのはどうしてか? 会話に困り、月にちなんだ話題を出したのかな? 考えてもわからないので、私は黙って月に視線を移した。
 すると、またディオが口を開いた。

「居住区改革の提案……気持ちは凄く嬉しいよ」

「でも、反対なんですよね」

「心配なんだ。俺はみんなを危険に晒したくない。だから、どんな些細な変化にも気を配り、もっとも安全と思う道を選びたいんだ」

「代表者なら当然です。私の提案は忘れて下さい。ただの自己満足だったみたいなので」

 そう言うと、ディオは首を傾げた。

「自己満足って、なに?」
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