追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
「あの……私、わけあって最近まで外に出たことがなかったんです。あまり人とも接していませんでした。だから、魔法で誰かを助けて、笑顔になってくれるのが嬉しくて……もっともっと、笑って貰いたいって思ってしまって。だから、みんなのため、といいつつ、実は自分のためだったと気付いたんです。まあ、気付いたのは今なんですけど……」

 カレリアス家の自室で、言われるままに創造していた日々。誰がなんのために使うのかわからない物を創っていた頃に比べて、グリーランドでの創造魔法は楽しかった。喜ぶヘンルーダの顔、驚くマイラやグレイスの顔。目の前に誰かがいて、反応してくれることに、いつの間にか有頂天になっていたのかもしれない。

「君……家に閉じ込められていたのか?」

 ディオは私の肩をぐっと掴み、目を見開いた。いや、聞いて欲しかったのはそっちじゃなく、自己満足の方なのですが?と、ツッコミながら、一応答えを返す。

「ええ。まあ……あまり思い出したくなかったんですけど……」

 元々、この話をするつもりはなかった。でも、月の魔力かどうなのか、自然と言葉にしてしまったのである。
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