追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 ディオは私の返答を聞いて、突然頭を抱えた。
 どうしたのだろう、境遇に同情して? 可哀想な子だと思った?
 どちらにしても、ディオがとても優しい人だとわかって少し嬉しくなった。
 なにもかも見透かしたようで、得体の知れない感じがあったけど、居住区の人の安全を一番に考え、私の境遇まで一緒に悲しんでくれるなんて……ちょっと、心がときめいてしまう。

「ディオ、ありがとう。でも、もう私、自由になったので……」

「待って!」

「は? あの? え?」

 頭を抱えていたディオは、不意に顔を上げた。瞬きもせず月を見上げる姿は、常人には見えないなにかを見ているようだった。

「ディオ?」

 心配して覗き込むと、彼はゆっくりこちらを向いた。
 そして、信じられないことを言ったのだ。

「グリーランド居住区改革をしよう」

「……ん?」

「改革はいい案だよ。ララの魔法で、みんなの苦労が減るなら、これに越したことはない。うん。山に引き籠っているのも、この辺が潮時かな」

 私は、言葉を失った。数分である。たった数分の間に言い分を百八十度変えるなんて、一体どういうことだろう?
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