追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 「ヤバい! 私、思い出しちゃった!」

 意識不明から数時間後、目覚めてすぐ発した言葉は「ヤバい」という現代語。
 消えてなくなりたいと懇願した私に訪れた奇跡は、前世の記憶を思い出すというめちゃくちゃな超常現象である。
 いやそんなことよりも。
 私、ララ・レダー・カレリアス、前世は大雑把な性格の、超大型ホームセンター自称有能販売員。アウトドアが大好きで、片道十キロの職場に、毎日自転車で通う、どちらかというと体育会系の女子である。精神的ショックに耐えられなくなったララ(私)は、追い詰められて前世の記憶を呼び起こしたのだ。

「さて、問題はこの状況をどう見るか、だわね」

 私は独り言のように呟いた。
 と言うのも、今世の自分であるララ・レダー・カレリアス。実は彼女、物語の中の人物なのである。
 その名も「悠久のファルナシオン」という本格ファンタジーの物語。
 ララは物語序盤で退場する悲劇の聖女……このまま聖女でいると、間違いなく生贄として死ぬ薄幸の女性なのである。ただ、結末は知らない。だって序盤しか読んでないから。
 友人にこの本を借りて、序盤まで読んだところでコンビニに行き、不幸にも事故に遭った前世の私。
 つまり、ララが死ぬのは知っているけど、他はさっぱり……というわけだ。

「たった今、私、聖女じゃなくなったわよね。てことは、どうなるの?」

 生贄にはならない。だけど、永久追放されてしまった。 
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