追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
「サーシャは今日も元気ですね! それじゃあ、キャンプセットの使い方を教えましょうか」

「ああ、助かるわ、見たこともないものだから、さっぱりなの。ねえ、ヘンルーダ様?」

「ええ。なにかに刺すのはわかるのだけど、なにに刺したらいいのか」

 ヘンルーダは、よっぽどペグが気になるのか、持ったまま放さない。
 そんなに刺したいなら、あとで死ぬほど使わせてあげよう、と優しい私は考えた。
 キャンプテントは、グリーランドへ来る道中にも使っていた。ただそれは少人数用。今から建てるのは大人数が寛げる大きいものである。大きくて最新のキャンプセットは超優秀で、非力な女性数人でも難なく設置出来るのだ。
 ペグを打ちたくてたまらないヘンルーダに、地面に数か所ペグを設置してもらうと、グレイスにロープの通し方を教える。マイアにテント本体を支えてもらって、中心のポールを建てて形を整えると、あっという間にテントは完成した。

「まあ、凄い! この中、風が全然入って来ないわ!」

 いち早く入り込んだヘンルーダが叫ぶ。
 するとマイアとグレイスも続いて入り、その快適さに歓声をあげた。
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