かぐわしい夜窓
後ろで小さく鳴る足音を聞きながら、陽だまりを歩く。


ずっとずっと昔、建国したばかりの頃、歌うたいは姫君から選ばれたと、歴史の勉強で習った。


国が豊かになり、子女や平民にもある程度の教育が施されるようになって、難しい歌を歌える者が増え、身分の低い者からも選ばれ始まった。


こんなちんちくりんに仕えることになって、歌まもりさまに申し訳ない。


高貴なお方が歌うたいに選ばれた年だってあるのに、こんな村娘の年に当たってしまうなんて。

歌まもりに選ばれるほど優秀で前途有望な騎士さまなら、もっと素敵なお方に仕えることだってできるのに。


わたくしは、このひとの十年間を、棒に振らせてしまうのだ。


ほう、とため息を吐くと、「お部屋に届けさせましょうか」と後ろから声がかかった。

はっとして意識を庭に戻す。


細く吐いたため息の先に、うつくしい花が揺れていた。


申し訳なくてのため息を、花に見惚れたからのため息だと思ったらしい。


……花は、好きだ。庭師の腕が伺える、大ぶりの花だった。


「ぜひお願いしたいです」

「後で庭師に申しつけておきます」


彼はきちんと約束を守ってくれ、それから、庭師によって丁寧に取り上げられた花が、週に一度、わたくしの部屋に届けられるようになった。


これは画期的なことだった。


毎日祈り、歌い、食べ、寝るなかで、すっかり曜日感覚などなくなってしまったわたくしが、七日の一区切りを思い出し、週末を楽しみにするようになった。


わたくしはたちまち週末が好きになった。
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