かぐわしい夜窓
歌まもりさまは、歌うたい——つまりわたくしの体を守るだけではなく、心も不安定にならないように気を配ってくれる。


まあ、わたくしが変になったら、国の守りは手薄になるし、神に見放されて神罰がくだるかもしれないし、必要なお仕事だというのはわかっている。


だから、頻繁に同じことを聞かれても、こちらも淡々と同じことを繰り返すだけだった。


「歌うたいさま、なにかお困りごとはありませんか」

「いいえ、ちっとも」


歌うたいは贅沢ができる。


だれが選ばれるかわからない以上、お姫さまが選ばれる可能性を視野に入れて、立派な神殿が建てられている。

身の回りにあるのは上等なものばかり。

食事も質素だけれど美味しい。果物は高いから、こんなに鮮度のいいものを毎日たくさん食べられるなんて夢みたい。


わたくしが緊張しないようにある程度離れてくれているものの、至るところに騎士が控えていて、危険もない。


「元村娘には、お花で十分です」


分不相応なものに囲まれていると落ち着かない。これでくつろげという方が難しい。
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