かぐわしい夜窓
扉は閉められなかった。燭台を手近な机に置いた歌まもりさまは、暖炉のそばの椅子に腰掛けた。


「巫女さまは、夜に明かりがあっても眠れるのですね」


わたくしの部屋では、毎夜明かりがついている。


暖炉の火は絶えず燃え、カーテンを開け放した窓からは月明かりが差し込み、寝台のそばには小さな明かりを置く。


「おかしいでしょうか」

「いいえ。ですが、私は少しでも明るいと気になって寝られないたちでして。いつも真っ暗にして寝るものですから、気になったのです」


わたくしは真っ暗にするのが苦手で、明かりをつけたまま寝る。


蝋燭も薪も燃料も、大変な出費だろう。歌まもりさまはよく、なにかお困りごとはと聞いてくれるけれど、十分贅沢をさせてもらっている。


「わたくしは明かりがあった方が好きです。眠くなってから消すのが面倒なのもあるのですけれど」


おどけてみせると、歌まもりさまはくすりと笑った。


「では、私が消しましょうか」
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