かぐわしい夜窓
2



巫女は年に一度、王族の前でおつとめをする。年に一度のお披露目と言い換えてもいい。


国境で毎日展開する陣を見れば、巫女がきちんと役目を果たしているとすぐに分かる。


これは、巫女を誠実でいさせるための儀式ではなく、王族を誠実でいさせるための儀式。


巫女の力、神の御威光を見せることで、王族や国が巫女を大事に扱うようにする。


巫女が歌い祈ると、聖堂いっぱいに柔らかな光が満ちるのだ。きちんと言葉に合わせてあって、神の御意志であることは明白だった。


豪奢な衣装に身を包んだ巫女を、いつものように「お似合いです」と褒めると、いつもなら微笑む巫女は珍しく唇を結んだ。


「ありがとう、ございます」

「どうされましたか」


淡褐色の目が揺れている。


「……笑わないでくださいね。わたくし、不安なのです」


何度やっても、慣れなくて。


震える声でこぼす巫女のお披露目は、今年でもう三度目になる。
< 19 / 84 >

この作品をシェア

pagetop