かぐわしい夜窓
3
「歌まもりさまのお仕事を教えていただくことってできますか?」

「私の仕事ですか?」

「身近なお仕事ですのに、全然詳しいことを知らないなと思いまして」

「私の仕事の仔細でしたら、こちらの書類の束をどうぞ。決まりごとなどが書いてあります。嫌気のさす量かと思いますが」

「み、見ません! やっぱり見なくていいです、嫌気がさしたら困ります……! いつもありがとうございます!」





「明日はなにか食べたいものはありますか? 厨房の料理人たちが、歌うたいさまはなんでも召し上がるから、よりお好きなものをお出ししたいと申しております」


食事は無駄のない量と味付けで、豪華すぎなくて食べやすい。


「果物が食べたいです」

「いつも果物じゃありませんか」

「瑞々しい果物が食べたいですね」

「おや、鮮度の悪いものがありましたか? 取り替えさせましょうか」

「いいえ、一度も。ですからわたくし、充分食べたいものを食べられているのです。幸せなことですわ」





「歌まもりさま」

「なんでしょう?」

「拍手をいただきたいのですが」

「はい」

「わたくし、背が、伸びました!」

「おめでとうございます。お慶び申し上げます」

「拍手をありがとうございます。美味しいものをたくさんいただいているおかげです」

「あなたさまが好き嫌いなく召し上がるからですよ。めでたいですねえ」

「はい! まだ全然歌まもりさまには追いつけませんけれど」

「いえ、追いつかれては困ります。私は残念ながらもう伸びないでしょうから、あなたさまに追いつかれたら、歌まもりを替わらなくてはいけなくなってしまう」

「あ、そう、ですね」

「そうですよ。どうか七年後も、私を、あなたさまの盾のままでいさせてくださいね」

「…………ご、ご飯を減らせば……」

「ご飯はしっかり食べてください」

「はい。すみません」
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