かぐわしい夜窓
「巫女さま、なにか、お困りごとはありませんか」

「いいえ、ちっとも」


聞き慣れた確認に、その日ばかりは続きがあった。


「それはようございました。では、なにかご入用のものはございませんか」

「ええと」

「普段使いするもので構いませんので、なにかありましたらお教えください」

「絶対ですか」

「ええ、できれば」


ものすごくはっきり頷かれる。


「巫女さまは倹約家でいらっしゃる。大変喜ばしいことですが、いろいろな予算が余っております」

「は、はい」

「そうすると、前の巫女がこのくらいだったのだからと、次の巫女さまも同じような予算を組まれることになります。よほどの倹約家の方でない限り、その方がお困りになる可能性が……」

「えっ」


確かに、お金はもったいないから使わないようにと思っていた。使いすぎより、使わない方がいいだろうと思っていた。


でも、まさか、そんな弊害があったなんて。


ひとさまにご迷惑をおかけするのは避けたい。それはまずい。
< 24 / 84 >

この作品をシェア

pagetop