かぐわしい夜窓
あなたはいつも後ろに控えているだけ。お役目を果たしているだけ。

わたくしが勝手に、すがっているだけ。


しゃらんしゃらん。

ぴかぴか。きらきら。


まばゆく重いしがらみに、ひとつ、わたくし由来の色が欲しい。


眩しく飾られるのは同じこと。お役目の内容も変わらない。関係はそのまま。


でも、あなたが選んでくれた色で飾ったなら、きっと、あと七年、それだけで頑張れる。


わたくしが欲しいのです。わたくしが気にしたいのです。


どうか、残りの年月は、一番自信のある自分で、一番胸を張れる自分で、あなたのそばに並んでいさせてください。


甘えだとわかっている。子どもな考えだと思う。


爪だけでいいから。

たったひとつでいいから、花売りにはなれないわたしに、よりどころをください。


「そうですね……」

「はい」

「私はそういうものに詳しくないので、あるのかわかりませんが」

「……はい」


声が掠れる。返事を絞り出す。


歌まもりさまが、ゆっくり言葉を選ぶ気配がした。


「金が、よいと思います」


私が、あなたさまが正装をなさるたびに「お似合いです」と申し上げるのは、本心ですので。
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