かぐわしい夜窓
『年齢も二十歳以上と決まっているのですよ。いざというとき、年下や同い年よりは、年上の方が頼りになるだろうということのようです。私は友人ではなく、盾ですので』


かつて、巫女に歌まもりの条件を話した。


年上の方が頼りになるなんて、よく言えたものだ。現にいま、自分はこの娘よりずっと年上なのに、頼りになっていない。


「歌まもりさまは鍛錬に励んでいらした。お役目をきちんと果たしていらした。わたくしが、不勉強だったのです。お花を好きだ、お世話をしたいというのなら、きちんと調べておくべきでした」

「いいえ、あなたさまをなにものからもお守りするのが私の役目です。私はあなたさまと我が国を危険に晒しました。私が至らなかったのです」


膝の上、きつく握った指が白いことに、こちらの目ばかり見ている巫女が気づかないといいと思った。


「……巫女さま、お願いがあります」

「なんでしょう」


穏やかに、穏やかに。唱えて声を整える。


「私の役目を解いていただけないでしょうか」


お役目を途中で終わらせるには、巫女の許しがいる。辞任はできない。


「解きません」

「巫女さま。御身を危険に晒す木偶の坊を、おそばに置いても意味はありません」

「騎士はあなたさまおひとりではありませんでした。お世話係の方々も見ています。この神殿にいる全員が気づかなかったことの責任を、あなたさまおひとりに負わせるつもりはありません」


辞任できないがゆえに、体調の思わしくない巫女に話しかけざるを得ないのが悔しかった。


余計に具合を悪くさせてしまうかもしれないが、緊急時のいまこそ、頼りになる者に替わる必要がある。

いま、許可を得なければ。
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