かぐわしい夜窓
「歌まもりさまは、どのように選ばれたのですか」

「神殿に所属している若い騎士のなかから、あまり威圧感のないようにと私が選ばれました」

「威圧感」


すらっとはしているけれど、この、大きな体で、威圧感がないと……?


「巫女さまは年若く、女性です。あまりにも鋭い眼光の者や、筋肉のつきすぎた者は、怖がられる傾向にあります」

「というと、その、失礼ですが、歌まもりさまは細身でいらっしゃるのですか……?」

「細い方ですね」

「そ、そうなのですね」


口調や所作が穏やかだから、怖くはない。確かに怖くはないのだ。


でも、細い……? 細い……?


あまり裕福でない育ちだからか、周囲はみな痩身だった。


思い出と比べると、いま周りにいる男性、特に騎士の方たちは、よく鍛えられた体つきをしている。


ああでも、騎士と言われて思いつくほど、がっしりした体躯ではないよね。子どもなわたしが怖がらないように、できるだけ線の細いひとをあてがってくれたのは本当だろう。


うん、ありがたいなって思っておいて、深く聞いてはいけない気がする。うん。


「もっと細くて背の小さい者もおりますが、歌まもりは巫女さまの盾になる者ですから。巫女さまよりは背が高くないと、盾にはなれません」


後ろにかばうのに、しゃがんでいただくわけにはまいりませんでしょう?
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