かぐわしい夜窓
【巫女が歌を歌えなくなるなどあり得ぬ! 歌まもりを罰せずしていかがする!】

「この場を守ってくださるみなさまは精鋭揃い、たいへん優秀な方ばかりです。みなさまのお役目を解いたとて、代わりの方がよい方ばかりとは限りません」


それに。


「かけてもらった毛布をわたくしが避けてしまえば風邪を引くように、周りの方がどれほど気にかけてくださっても、わたくしが至らなければ、喉を痛めてしまうことはございますわ。それはわたくしの問題ですもの、歌まもりさまを罰する必要はございません」

【歌まもりとは、その名の通り、おまえを守るから歌まもりと言うのだ。巫女をこのような状態にして、守っているとは言わせぬ】

「わたくしが勝手に石につまずいて転んだといたしましょう。それは石のせいであって、歌まもりさまのせいではありません」

【我にとっては石も歌まもりも同じこと】

「あら、わたくしにとっては同じではありませんのよ。歌まもりさまはわたくしと同じ、いま生きている人間ですもの」


それに。


「わたくし、あなたさまは、たとえ小さな石であっても、なんの罪もないものを消し去るほど狭量なお方ではないと、存じ上げておりますわ」


巫女が滔々と説いているが、いや、風邪や路傍の石と今回のことを一緒くたにしていいものか。
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