かぐわしい夜窓
お互いの役目を通して出会ったのは、十五歳のとき。それから六年経った。


第二関節以上の差があった小さな手は、第一関節まで差を縮めた。


短く刈られていた髪は、よく手入れされて長くなり、いつもうつくしく編み込まれている。

数年前、ほどくと背中に届くようになったのを、夜、明かりを消すときに知った。


歌声は変わらず豊かで、年々うつくしさを増している。

そばに控える傍ら、祈りの歌を聞くのがずっと好きだ。


果物を食べると、いつもほんとうに幸せそうな顔をする。

瑞々しい果汁の多いものが特に好きで、暑い日は果物をたくさん食べて涼む。


背が高くなった。すくすくというよりはするすると伸び、目線がよく合うようになった。


無事抜かされずに済みそうで、実を言うとほっとしている。


女性に怖がられることも多いものの、このお役目においては最上だ。背が高くてよかった。


祈りと祈りの合間、しとやかな歌うたいの仮面を外すとき、よくこちらを見上げて眩しそうに笑う。

なにが眩しいのかと聞くと、なんでもないと答えるのがお決まりだった。


花を届けるかと聞いたら、泣きそうな顔をして頷いたあの夜から、いまも欠かさずに、花を一輪摘む。

捧げ物がたくさんあるからいらないかと思ったが、格別なのだと言われた。

あんまり渡しすぎて、保ちやすいものがどれなのか、見分けられるようになってきたほど。
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