かぐわしい夜窓
*
「聞き分けられなくて、ごめんなさい。歌まもりは、あなたさまがいいのです」
困りましたわね、と笑うと、彼の顔がくしゃりと歪んだ。
「聞き分けるなど」
『どうか七年後も、私を、あなたさまの盾のままでいさせてくださいね』
かつてそう笑ってくれたこのひとに、最後まで歌まもりでいてほしかった。このひとがよかった。
でも、それは。
「わたくしの、わがままだわ」
辞めさせてほしいと願っているのに、個人的な理由で辞めないでほしいと言うなんて、わがまま以外のなにものでもない。
彼には断るすべがないのだから、わがままなんて可愛らしい言い方ではなくて、脅しと言い換えてもいい。
ずるいのは、わたくし。
……公私混同、ひどい巫女だわ。
ぐっと唇を噛む。
「いいえ。光栄に存じます」
怒られても仕方ないのに、穏やかに微笑むばかりでさっぱり怒らないこのひとに、甘えてしまう。
手ひどくなじって、上に掛け合って、辞められたっておかしくない。
それほどの仕打ちをしようとしている。
でも、今夜も窓辺にお花を飾りたい。
あなたにお花を持ってきてほしいなんて、甘えたことを考える。
「聞き分けられなくて、ごめんなさい。歌まもりは、あなたさまがいいのです」
困りましたわね、と笑うと、彼の顔がくしゃりと歪んだ。
「聞き分けるなど」
『どうか七年後も、私を、あなたさまの盾のままでいさせてくださいね』
かつてそう笑ってくれたこのひとに、最後まで歌まもりでいてほしかった。このひとがよかった。
でも、それは。
「わたくしの、わがままだわ」
辞めさせてほしいと願っているのに、個人的な理由で辞めないでほしいと言うなんて、わがまま以外のなにものでもない。
彼には断るすべがないのだから、わがままなんて可愛らしい言い方ではなくて、脅しと言い換えてもいい。
ずるいのは、わたくし。
……公私混同、ひどい巫女だわ。
ぐっと唇を噛む。
「いいえ。光栄に存じます」
怒られても仕方ないのに、穏やかに微笑むばかりでさっぱり怒らないこのひとに、甘えてしまう。
手ひどくなじって、上に掛け合って、辞められたっておかしくない。
それほどの仕打ちをしようとしている。
でも、今夜も窓辺にお花を飾りたい。
あなたにお花を持ってきてほしいなんて、甘えたことを考える。