かぐわしい夜窓
「歌まもりさま。あなたを巻き込んでしまって、ごめんなさい」

「いいえ。私はあなたの歌まもりです」


ああ。歌まもりさま、どうして、あなたは。こんなときまで。


隙のない言葉選びは、責任感の現れ。それはわかっている。


でも、仕事だからだと突きつけられたような気持ちがしてしまって、勝手に寂しい。


「ご指摘ありがとうございます。おやすみを、いただきたく思います」

「かしこまりました」


わたくしは、もう、今日が誕生日だと思い込んでいた。というか、誕生日だと思う。


当然周囲にもそのように話していたので、交代の儀式がそろそろあるだろうと、新しい巫女を迎え入れる準備も進んでいた。


「いつまで、待てばいいのでしょう。待っていたら、いつかお告げがくるのでしょうか。もし聞き逃していたら……」

「大丈夫です。いつまででも、私が一緒にお待ちします。もし聞き逃していたら、もう一度教えてくださいますよ。私を許してくださったのです。神はそんな意地悪はなさらないでしょう」

「そう、そうですね」

「ええ、そうですよ。ほら、やすみましょう」


ゆっくり横になると、宥めるように布団を掛けられた。
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