かぐわしい夜窓
6
息苦しく、先の見えない不安のなかで、おつとめを繰り返す。


何度祈っても、何度歌っても巫女の力は剥奪されず、変わらず神はわたくしの祈りにこたえてお力を示した。


毎日施す装飾が、しゃらしゃらと音を立てる。なにもかもがまばゆいなか、指先の金だけが、唯一の慰め。


歌まもりさまは、夜になると、やはり変わらず花を差し入れてくれた。


「こちらはよい香りがしますよ」

「ごらんなさい、月のようでしょう」

「あなたが前にお好きだとおっしゃっていたので」


穏やかに一言添えて渡されるお花は、以前より種類が増えた。捧げ物のお花が、ぱたりと来なくなったからだ。


いままでは捧げ物があって、捧げ物は大ぶりの花ばかりが多かったので、歌まもりさまは気を使って緑のうつくしいものを選んでくれていた。

色が多すぎるとまとまらないだろうと、飾るこちらのことを考えた差し入れにしてくれていたのだ。


でも、あんなことがあって。


神殿のひとたちは、だれもわたくしを責めない。聞こえるところでは噂話もしない。

言葉も態度もいつも通りにしてくれているけれど、神殿外のひとたちはそうもいかない。


歌うたいがまだ現役なのはおかしいらしいと噂が広まると、捧げ物がなくなった。


枯れたお花をよけるたび、あんなにお世話に走り回っていた神殿は、少しずつ、少しずつ、ものさみしくなっていった。
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