かぐわしい夜窓
*
生まれた日もわからないとは、何事か。
聖堂前に人々がおしかける。
はるばる巡礼に来たというのに、随分と手荒い歓迎である。土地の豊かさを祈らんとする巫女を、こうも蔑ろにするとは。
巫女の住まういつもの神殿なら、このような事態にはならない。
いつもの神殿では、奥まったところには住まいがあるので、厳重に警備をしている。
喧騒が祈りの邪魔になってはいけないと、防音設備も敷かれている。
なにより、こんな事態になど、われわれがさせない。
あの娘がなにかをするはずがないと、巫女を戴く神殿の全員がわかっていた。
あの娘が、あの娘に限って、ばかなことをするはずがない。
そういう娘だった。
そういう娘だと、十年間が知らしめてきた、巫女だった。
「顔を見せにゆきます」
祈りを取りやめるかざわつくなか、硬い顔で口を開いた娘の前に、かばうように前に出た。
ああ、歌まもりでよかった。
この喧騒をおさめる術を、歌うたいをまもる立場を、持っている。
生まれた日もわからないとは、何事か。
聖堂前に人々がおしかける。
はるばる巡礼に来たというのに、随分と手荒い歓迎である。土地の豊かさを祈らんとする巫女を、こうも蔑ろにするとは。
巫女の住まういつもの神殿なら、このような事態にはならない。
いつもの神殿では、奥まったところには住まいがあるので、厳重に警備をしている。
喧騒が祈りの邪魔になってはいけないと、防音設備も敷かれている。
なにより、こんな事態になど、われわれがさせない。
あの娘がなにかをするはずがないと、巫女を戴く神殿の全員がわかっていた。
あの娘が、あの娘に限って、ばかなことをするはずがない。
そういう娘だった。
そういう娘だと、十年間が知らしめてきた、巫女だった。
「顔を見せにゆきます」
祈りを取りやめるかざわつくなか、硬い顔で口を開いた娘の前に、かばうように前に出た。
ああ、歌まもりでよかった。
この喧騒をおさめる術を、歌うたいをまもる立場を、持っている。