かぐわしい夜窓
手ひどくは扱われなかったけれど、痛ましそうな顔をされることが増えた。


わたくしは、神に選ばれて立てた誓いを、痛ましいとは思わない。


巫女は、なにひとつ自分では選べない。選ばれ、教えられ、お役目をこなさせられる。


それは、揺るがない決定事項である。国がかかっているということは、自分の命もかかっているということなのだもの。


でも、選択肢がないお役目を賜ったことを、その結果のいまを、苦しく思うことはあれど、痛ましいだなんて思わない。


声が響くような形に設計され、高くつくられた天井の下で歌うのは、とても気分がいい。


だから、わたくしが賜ったのが、歌うことに特化したお役目でよかったと思うほどなのだ。


どうやったのか、いまは「生まれのわからぬ巫女」扱いではなくなったことも大きいかもしれない。

わたくしはあわれな娘ではなく、「あまりにもお気に入りすぎて、神に手放してもらえない娘」ということになっている。


民意を変えるために尽力してくれたひとは、きっとすみれ色の目をしているに違いなかった。


周囲に恵まれたと、ずっと思ってきた。


神殿につとめる人々が清廉でいてくれるのは、あたたかく、ありがたく、夢のようなことだった。
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