かぐわしい夜窓
わたしは歌うたいになってから初めて、高級で精緻でこまやかな飾りは、重なるとじゃらじゃらうるさく鳴るのではなくて、しゃらしゃらと星が流れるような音を立てるのだと知った。


「巫女さま、よくお似合いです」

「ありがとうございます」


歌まもりさまは律儀なひとで、毎日着替えるたびに、お似合いですとわたしを褒めた。


村娘が早く巫女のお役目に慣れるように、いろいろ心掛けてくれているのだと思う。ありがたい。


朝の祈りと歌を済ませると、歌うたいとしての勉強が待っている。


ただの村娘が威厳ある巫女になるには、話し方、歩き方、国の歴史、いまの情勢、そういうなにもかもを一から覚えなくてはいけない。楽器も練習する。


あっという間に陽が高くなり、昼餉の時間になる。


昼は朝よりも量を摂り、昼の祈りと歌を済ませる。


教えられたことの復習をして夕方になると、夕べの祈りと歌があり、それを済ませて夕餉を摂ったあと、寝る前に最後のおつとめがある。


歌うたいは、日に祈りと歌を四度行う。勉強もある。


毎日は目まぐるしく、月日は飛ぶように過ぎた。


ひと月過ぎると、おつとめの際になにも見なくても、祈りも歌も諳んじられるようになった。

ふた月過ぎると、お淑やかな身振りが身につき、巫女らしいと言われるようになった。


一年が過ぎた頃、わたくしはすっかり歌うたいらしくなっていた。
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