ファーストキス~「日直当番」より~
「少し遅くなってしまったんですけど、誕生日プレゼントです」

「ええ!そんな、いいのに」

 9月27日が私の誕生日だった。その日、進藤くんは私がひとりでいるときに「誕生日、おめでとうございます」とこっそり言ってくれたのを思い出した。進藤くんにはいつ私の誕生日なのか教えてなかったから、まわりの友達が口々に「おめでとう」と言ってくれていたのを聞いて知ったのだと思う。

「開けてみてください」

 進藤くんには、似つかわしくないピンクの小さなギフトバッグだ。中を開けてみると、ピンクのショッピングバッグから頭と足を出したテディベアが入っていた。

「かわいい」

「クマをバッグから出してみてください」

 言われる通り取り出してみると、テディベアの胸元にハート型の箱がついていた。箱を開けてみると、オープンハートのネックレスが入っていた。

「ええー!ネックレスもらったのなんて初めて」

 ハートには小さな青色の宝石がついていた。

「9月の誕生石はサファイアです。深みのある青色は、揺るぎない心の象徴だと言われています。あなたの名前、『捺乃』の『捺』という字は、やわらかな物腰ながら自分の意思をしっかり貫き通すことができる人という意味があります。『捺乃』という名前にぴったりだと思いますよ」

 すごく考えて選んでくれたんだろうなと思うと、なんだか胸のあたりがじーんと熱くなった。
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