Holy Night
「いらっしゃいませ」
持っていた缶ビールを手放すと
そのままの手で懐から財布を取り出した。
重い溜め息とブランドの財布が似合わない。
自分よりずっと若い男のほうが仕事を出来るもんで
自分の役割の乏しさに失望でもしているような
彩りのない
枯れたオーラがこの時期によく馴染んでいる
私はこういうとき
いつもより特別に魔法をかける
プロだけが習得できる、営業スマイル上級編
「120円です」
“あなたは一人じゃないですよ”
心から思っていれば、
気持ちはつたわる
「…あと肉まん1つちょうだい」
おじさんの笑顔には
華やかさが隠れていた
「ありがとうございました」
「奈奈ちゃん、」
私の名前は奈奈。