Holy Night
「店長」
「もう時間だから、今日は」
おててのしわとしわを合わせて
「上がりぃ〜」
パッと広げて見せる
お調子者の若店長
これでも接客、クレーム担当は一流だし
ミスしたときは真面目に叱ってくれるし
何かと厚い信頼がある
「えぇーもっと稼ぐ〜」
「だーめー高校生は英単語覚えて寝なさい」
遅番の人が向かってくる
「はぁーい お疲れさ」
「あ、ちょいまち」
右掌を見せられて
レジの裏は邪魔だから、隅に縮こまった。
夜の駅前は忙しい
どこに潜んでたんだと言わんばかりに人で溢れていく
溺れずになんて進めるんだろうか
人の波は荒い。
店長がシフトのスケジュール表を持ってやってくる
「24日だけ何も書いてないけどさぁ」
……。
「ギリギリまで彼氏できんの待ってたって意味ないよ〜」
ニヤッとする店長。
くそぅ。
「ちょっと迷ってただけですって!いいです、入ります!」
「さすが奈奈ちゃ〜ん!」
私だって一応女子高生。
誰だって特別な日にバイトを入れるには
それなりの覚悟がいるはずだ。
休憩室に戻ると
私はなるべくゆっくり着替えた。