Holy Night



ゆっくりと和音が移り変わる
丁寧に、
唸りたくなるほどこちらをじらして、
明るい響きがぽろぽろ舞い降りる


それはある意味芸術的なほどめちゃくちゃな音楽センスを持つ私が聴いても
ほっ、と一息つける演奏だった。

歌声は無かった
だけど、
音色が…優しくて
私の中にすうっと入ってきた。
心地好かった。



きっとこの24歳ギター青年は
高校を卒業して
親と食い違い、変に大学に行かされる。
一度は夢を諦めたものの
テレビに映る路上出身のバンドの姿を
自分と照らし合わせてしまい
慌てて外へ飛び出した。



曲調が少し速くなる。
いやらしいほど、丁寧に。




彼の才能は
そう簡単に受け入れてもらえなかった。

何が必要か
何を伝えるべきか
僕は音楽で何を表現できるんだ。
悩んだ。
そしてとりあえず弾いた。
弾いて弾いて
何かしら大切なことが分かったその時
彼は大きな自信を手に入れていた。


そして今や、知る人ぞ知る
路上の有名人となったわけだ。



ちょっとした観客が
彼を囲んでいて
その中のわずかな観客が
何かしらに心打たれてる光景が
響く音色と共に想像できた。





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